こんにちは!
UIデザイナーのYunyです。
- 新卒やジュニア、駆け出しのデザイナーで、実務でのコミュニケーションに苦労している方
- 先輩やPdMから「なぜこのデザインにしたの?」と聞かれたときに、言葉に詰まってしまう方
- AIを使ったデザイン制作や壁打ちが進む中で、これからのデザイナーの生存戦略やキャリア構築を考えている方
仕事の中で「なぜこのデザインにしたの?」と聞かれた際、うまく言葉にできずにもどかしい思いをした経験はありませんか?
デザインを言葉にする「言語化力」は多くのデザイナーが直面するハードルであり、私自身もかつては説明ができず本当に悩んでいました。
最近ではAIによるビジュアル自動生成が進化し、対話型の「AI壁打ち」も当たり前になってきています。
しかし、このAIを使いこなすためにも、私たち人間側が「何をどうしたいのか」「なぜこのUIなのか」を明確に言語化するスキルが必要不可欠です。
今回は、感覚的なデザインを論理的に翻訳し、チームの共通言語にするための具体的なアプローチや日常のトレーニング方法についてお話しします。
1. なぜ今、デザイナーに「デザイン言語化力」が必要なのか?

結論からお伝えすると、「なぜそのデザインにしたのかを言葉で説明し、合意を形成する力」の重要性自体は以前から言われていましたが、AIの急速な発達によって、その必要性がこれまで以上に極めて高まっています。
もともとデザインの意図を説明することは大切でしたが、基本的な造形や整ったレイアウトであればAIが瞬時に生成できるようになった現在、表層的な制作作業自体のコモディティ化が加速しています。
特に新卒やジュニア、駆け出しのデザイナーにとって、単に「綺麗なカンプを作れる」だけでは、チームの中で十分な価値を発揮することが難しくなっています。
だからこそ、自身の市場価値を証明し、キャリアの初期段階から成長を加速させるためにも、言語化と合意形成の能力が極めて強く求められるようになっているのです。
デザイナーが単なる「作業のオペレーター」ではなく、プロジェクトの信頼できるパートナーとして機能するためには、自らのデザイン意図を客観的かつ論理的に説明できなければなりません。
非デザイナーのステークホルダー(ビジネスサイドやエンジニアなど)と対話する際、言語化が不足していると、以下のような問題が発生します。
- 判断基準のズレ: デザイナーは「情報設計」や「認知負荷の軽減」の観点で設計しているのに対し、ビジネスサイドは「短期的な数値目標(コンバージョン率など)」、エンジニアは「実装コスト」という全く異なる基準でデザインを見ています。
- 不毛なフィードバックの繰り返し: 共通の判断軸がないため、「なんとなく違う」「もう少しおしゃれに」といった主観的で抽象的なやり取りが続き、度重なる修正作業(手戻り)が発生します。
デザインの言語化とは、単に自分のデザイン案を強引に通すための説得テクニックではありません。
お互いの「判断基準のズレ」を観察し、感覚的なイメージを論理的な言葉へ翻訳することで、チーム全体のキャッチアップコストを下げ、共創の土台を作るためのものなのです。
2. デザイン意図をロジカルに分解する「3つの軸」フレームワーク

感覚的な「なんとなく良さそう」から脱却し、誰にでも伝わる論理的な説明を組み立てるには、デザインの決定プロセスを「目的」「根拠」「オプションとトレードオフ」の3つの軸に分解して整理するのが有効です。
① 目的 (Purpose)
そのデザインが「何を解決するためのものか」、ユーザーのタスクやビジネス上のゴール(KPI)とどのように結びついているかを明確にします。
✕ 悪い例:「画面がすっきり見えるように、ボタンを右上に小さく配置しました」
◯ 良い例:「今回のターゲットユーザーは日常的にアプリを使い込んでいるため、頻繁に行う『保存』アクションへのアクセスを優先し、視線誘導の起点となる右上に配置しました」
② 根拠 (Basis)
なぜその視覚表現やレイアウトを選んだのか、個人の好みではない客観的な裏付けを提示します。
これには、色彩心理学やゲシュタルトの法則(近接、整列など)といったデザインのセオリー、あるいはユーザー行動のデータや既存のメンタルモデル(使い慣れた他社アプリの構造など)が該当します。
✕ 悪い例:「ここの余白はこれくらいがしっくりきました」
◯ 良い例:「近接の法則に基づき、関連性の高い情報群の余白を8pxに狭め、異なるセクション間の余白を32px空けることで、スクロール中も情報の区切りが直感的に伝わるよう設計しています」
③ オプションとトレードオフ (Options & Trade-offs)
デザインの決定は常にトレードオフを伴います。
「他にどのような選択肢を検討し、なぜ最終的にこの案を採用したのか」、あるいは「何を優先して何を捨てたのか」を説明できるようにしておきます。
✕ 悪い例:「このデザインが一番良いと思います」
◯ 良い例:「ナビゲーションについて、下部タブUIとサイドメニューUIの2つを検討しました。項目が3つと少なく、瞬時の切り替えが必要なため、実装工数は若干増えますが、認知負荷の最も低い下部タブUIを採用し、サイドメニュー案は見送りました」
この「3つの軸」は、日々の実務ミーティングはもちろん、新卒やジュニアデザイナーの就職活動におけるポートフォリオ作成や採用面接の場でも強力な武器になります。
「なぜこのデザインにしたのか」をこのフレームワークに沿ってあらかじめ記述しておくことで、採用担当者や面接官に対して「感覚だけで作っているのではなく、目的と根拠を持って設計できるデザイナーである」ことを明確にアピールでき、実務経験が浅くても高い信頼感を与えることができます。
また、このように要素を分解して整理しておくことで、他職種のメンバーも「何を基準に議論すればよいか」が分かりやすくなり、現場での建設的な意見交換がスムーズに行えるようになります。
3. 先進企業の事例から学ぶ「共通言語」としての言語化
多くの成長企業やデザイン組織では、デザイナーの評価基準や社内プロセスにおいて、言語化の重要性が公式に明文化されています。
| 企業・組織 | 言語化・共通言語化に関する具体的な取り組み |
|---|---|
| クックパッド | デザイナーに対して「画面を見た瞬間に一番まずい部分が分かる」「説明文を足す前に構造を疑う」ことを要求。デザイン判断の背景や根拠を明確に言語化し、チーム全体で共有するスキルを求めています。 |
| メルカリ | デザイナーの成長指標である「Design Ladder」において、「課題と価値の言語化を通した明確なゴール設定」や「MVPとアクションプランについてチームと合意する」など、言語化と合意形成の能力を評価基準に直接組み込んでいます。 |
| LINEヤフー | 約500名規模のデザイナー組織において、判断のブレを防ぐための共通指針「Design Style」を策定。アウトプットだけでなく、プロセスやスタンス(すばやいフィードバックなど)を言語化し、PdMや開発者を含めた開発の共通言語にしています。 |
| リクルート | デザインレビューにおいて、無駄な主観や属人性を排除するため、「ビジネス観点」「企画観点」「UX観点」「デザイン観点(利用文脈)」「ブランド観点」「開発観点(実装の費用対効果)」という言語化された6つの基準に沿って評価を実施しています。 |
| Goodpatch | 行動指針(バリュー)に「Whyが人を動かす(Inspire with Why)」を掲げ、曖昧なイメージに輪郭を与えて認識を揃える「言語化」を極めて重視する組織文化が根付いています。 |
これらの企業事例が示すように、シニアレベル以上のデザイナーに共通して求められるのは、単なるスタイリング能力ではありません。
「デザインを通じて事業価値をどう最大化するか」を論理的に語り、チームを巻き込んで合意を形成する力なのです。
4. 日常の業務に組み込める「言語化トレーニング」

デザインの言語化力は、生まれ持ったセンスではなく、日々の意識的な取り組みによって後天的に鍛えられる「技術」です。
特にキャリアの浅いうちは、まず「無意識に行っている選択を意識化すること」から始めましょう。
今日からでも実践できる3つのトレーニング方法をご紹介します。
① 「なぜ?」を3回繰り返す自問自答
自分のデザイン作業中に、無意識で行った選択(色、フォント、余白など)に対して、頭の中で「なぜそうしたのか」と自問自答を繰り返します。
ジュニアのうちは、上司や先輩から突っ込まれやすいポイントを先回りして考えるのがコツです。
- 「なぜここのフォントサイズを大きくしたのか?」
→ 「ユーザーが最初に読むべき見出しだからです」 - 「なぜ最初に読ませる必要があるのか?」
→ 「スクロールするかどうかの判断基準になる情報だからです」 - 「なぜこの情報が判断基準になるのか?」
→ 「前ページでの課題感と直結する結論部分だからです」
最低3回繰り返すことで、自分の感性的な判断を客観的なロジックに結びつける回路が鍛えられます。
② 既存デザインの「逆引き」トレース
世の中の優れたUI(日常的に使うアプリなど)を観察し、「制作者はどのような課題を解決するために、なぜこのレイアウトにしたのか」を逆算して仮説を立て、言葉に書き出してみます。
単に見た目を綺麗だと感じるだけでなく、「この配置になっている理由は、スマートフォンの親指が届きやすい範囲を考慮したからではないか」といった仮説を言語化することで、自分自身のデザインの引き出しが拡張されます。
③ AIを用いた高速PDCA壁打ち
近年では、AI(ChatGPTやGeminiなど)を壁打ち相手にした言語化トレーニングも非常に効果的です。
例えば、AIに対して「このような目的のUIデザイン(またはHTML/CSSコード)を作成してほしい」と指示を出します。
AIから出力された結果に対して、「もっと情報の優先度を高めるために余白を広くして」「ターゲットユーザーのメンタルモデルに合わせて配置を変更して」など、具体的な修正指示を重ねていきます。
AIは人間の「なんとなく」という曖昧な表現を理解できません。
そのため、このプロセスそのものが、自らの意図を「具体的かつ客観的な指示」に落とし込むための極めて速いフィードバックループ(PDCA)になります。
5. レビューをチームの共創の場にする工夫
組織としてデザインの品質を担保しながら言語化力を高めるためには、デザインレビュー(DR)の仕組みづくりも重要です。
特に新卒やジュニアデザイナーにとって、先輩やリーダーからのデザインレビューは「自分の作ったものが否定されている」ように感じられ、心理的ハードルが非常に高くなりがちです。
しかし、レビューは決して個人の能力を測る試験ではなく、チームでより良いプロダクトを作るための「共創の場」です。
そこで、レビューの心理的ハードルを下げ、活発な合意形成とジュニアの成長を促すために、以下のような工夫が有効です。
- 「見た目」から議論に入らないルールの徹底: レビューの冒頭では、いきなり完成したデザインデータを見せるのではなく、必ずデザイナー自身が最初に「案件の背景」「解決したい課題(目的)」「今回検証したいポイント」を言葉で説明するルールを徹底します。これにより、「好みの問題」に終始するのを防げます。
- 「2割共有」とオンデマンドな壁打ちの推奨: デザインが8割〜10割完成した段階でレビューに出すと、大きな手戻りが発生した際のダメージ(心理的・工数的)が計り知れません。新卒やジュニアこそ、ワイヤーフレームや初期のアイデア段階(2〜3割の進捗)で、「なぜこの方向性で考えているか」を気軽に言葉で先輩と壁打ちし、早めに軌道修正を図る仕組みを推奨します。
- ラジオ感覚でのオープンな聴講: レビューの場を当事者以外にもオンラインで解放し、他のメンバーが「ラジオ感覚」で聴講できるようにします。他のデザイナーがどのように自分の意図を言語化し、フィードバックを受け取っているかを聞くだけでも、ジュニアデザイナーにとっては非常に学びの多い、生きた教科書になります。
デザインレビューの場を「意図を説明し、他者の視点を取り入れてより良くする対話の場」として再定義することが、新卒やジュニアデザイナーの急速な成長とプロダクトの品質向上を両立させる近道です。
あわせて読みたい:デザインの裏側にある「意図」と「協働」
デザイナーの役割が変化する時代において、チームで共通言語を持ち、どのようにプロダクトの体験を作り上げていくかについて、こちらの記事も参考にしてみてください!
終わりに
AIがビジュアルを瞬時に作れる時代だからこそ、人間心理に基づき「なぜそのデザインにしたのか」を言葉にする価値がかつてないほど高まっています。
最後に、今回の記事で押さえておきたいポイントをまとめました。
- 目的・根拠・トレードオフの3軸でデザイン決定のプロセスを分解する
- エンジニアやPdMなど、相手の職能の判断基準(物差し)に合わせて言葉を翻訳する
- 日常の中で「なぜ?」を繰り返す自問自答や、AIを壁打ち相手にした練習を取り入れる
- ジュニアデザイナーこそ、デザイン初期段階の「2割共有」で気軽に壁打ちする習慣を作る
最初から完璧な説明を目指す必要はありません。
まずは日々の無意識な選択に対して「なぜ?」と1回問いかけてみることから、少しずつ言語化の引き出しを増やしていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
それでは、良いデザインライフを!





